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西成の歩き方 (16) あいりんセンター<前編>

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日本最大の労働者の街・西成釜ヶ崎「あいりん地区」のシンボル的建物である「あいりん公共職業安定所」。釜ヶ崎に住んでいる3万人とも言われる日雇い労働者の仕事を斡旋する場所であるが、そこは同時に労働者の生きるか死ぬかのサバイバルライフの舞台として、決して常人を寄せ付けない負のオーラを放つ場所であり、内部の写真は不思議とWEB上を検索しても出てくる事はない。「SHINGO☆西成」の歌のPVに現れるくらいである。

あいりん公共職業安定所

大阪DEEP案内では、日雇い労働者のオッサンの肖像権にも配慮しつつ、あいりん公共職業安定所の中の写真を収めてきた。ここに記録しようと思う。繰り返すが、この街で人前で堂々とカメラを向けるような事はやめておいた方が良い。素性を知られたくないワケアリな方々が大勢住んでいる場所だからだ。

せめてパソコンのモニターの前で鼻息を荒くして西成のありのままの姿を見つめて欲しい。日本には、こんな街があるのだという「事実」を知って欲しい。

西成の歩き方レポートの続編です。初めからお読みの方はこちらからどうぞ



あいりん公共職業安定所

先日の訪問時には黒毛の猛犬が立ち塞がって居た為、先に進めなかった建物の奥へ、遠慮もなくズンズン突き進んでいこう。

今日うろついている野犬は、それほど凶暴ではなかった。労働者のオッサンに腹を撫でられながら気持ち良さそうに寝転がる大型犬の姿があった。「ホンマ人間の子とおんなじやな」と、そこまでは良いが、「チ○ポしごいたったらもっと気持ち良うなるで」と答えるのはさすが西成流である。

タイル絵

年代を感じさせるタイル絵。

売店等もある

日曜日なので、建物内にある食堂や店舗は全て閉店している。
ちなみに地下階はあり、そこに降りるとコインランドリーやシャワーも備え付けで置かれているというが、今回はパスした。

廃品回収小屋

あいりん公共職業安定所の横に建っているどう見ても不法占拠なバラックは大量の廃材置き場。いわゆるリサイクルショップと呼べばいい施設であろうか。この家の主がどうも大量の犬を飼っているようで、子犬の姿も見える。

わくわく動物ランド

まさに「わくわく動物ランド」。向かいの敷地には「犬はつないで飼いましょう」の看板があるも空しく響くだけ。狂犬病予防接種を受けているかどうかすらも怪しい「西成犬」の存在は釜ヶ崎各所で野良とも飼い犬ともつかず多く見かける。

もしも最後の最後になったらオッサンらの食糧なんだろうな…と、まさかそこまでとなると冗談がキツイが、犬の糞をも貴重な小道具として使い、高齢者女性の服にわざと擦り付けて「拭いてあげる」と優しく迫りつつカバンから財布を盗み出すオッサンも居るので、決して油断はできない。(→詳細記事

成人病予防検診を受けましょう

犬の狂犬病予防接種も重要だが、人間様の健康管理も釜ヶ崎では行政がしっかりとサポートしている。

日雇い労働者を対象とした成人病予防検診で大阪府が指定している病院は、何故か港区弁天町の「松浦診療所」。知っている場所なので驚いたのだが、いつも建物の前には極左ゲバ文字で松浦診療所を糾弾する文章が書かれた香ばしい横断幕が掛かった、あの診療所だった。釜ヶ崎つながりだったのか。

松浦診療所

これね、これ。

日雇者雇用保険の注意書き

その隣には日雇い労働者の雇用保険に対する取り決めが書かれた掲示板がある。日当によって雇用保険手帳(白手帳)に貼る印紙が3種類あり金額違うのだが、一番高い1級の保険料でも労働者の負担額は1日200円程度である。

過去2ヶ月間で26日以上の勤務実績(毎日白手帳に貼る印紙が勤務実績の証拠になる)がないと失業保険(アブレ手当)は支給されないが、実際には物理的にそれだけ多くの日数仕事になかなかあり付けないので、裏でこっそり印紙の売買がされているらしい。

ちなみに白手帳の新規発行も以前はドヤへの滞在が証明できれば可能だったが、不正取得が後を絶たないため今では住民票や免許証など身元が確認できるものがないと発行する事ができないそうだ。釜ヶ崎解放会館に不正に登録されている3300人の住民票が削除されて、労働者や運動団体が猛烈に怒っているのは選挙権の剥奪だけではなく、こういった事にも一因がある。

1階

まるでどこかの収容所みたいな風貌である。毎朝4時くらいにはこの場所に大量の労働者が行列を作る。先着順なので遅れたら「アブレ」る。みんな生きるのに必死だ。同時に周囲には正規の日雇いではない「手配師」の姿も多く現れる。

案内図・注意書き

「アジったりしないでください」なんて注意書きは古臭すぎて逆に新鮮である。いわゆる極左で赤い人がいっぱいやってくる釜ヶ崎ならではの言葉だ。

上階へ上がる階段

「あいりん公共職業安定所」というのは、実はこの建物の3階にある一施設の名前でしかなく、建物全体の名称は「あいりん労働福祉センター」というのだ。釜ヶ崎のオッサンは単に「センター」と呼んでいるそうだが。

この階段で2階を飛ばして3階まで上がることができる。知らずにやってきた人間が登るのは心理的にかなりのプレッシャーだが。まるで精神病院のような無機質なコンクリート壁と鉄柵のゲート、薄暗い照明と緑色の床が、退廃感をより引き立たせる。

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参考記事
「ホームレス」の生活実態 釜ヶ崎での生活体験
釜ヶ崎小辞典
日雇い – wikipedia
西成区地域アクションプラン – 西成区ホームページ

参考になりそうな書籍

↑「こじき大百科」同様、発禁処分になっている村田らむ氏のホームレス事情渾身レポート。残り僅かです。

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DEEP案内シリーズ管理人。大阪ベイエリアの貧民窟育ち。独自のひん曲がった視点で街歩きを続けております。2008年より上京。関西に留まらず全国、海外に取材対象を薄く広く伸ばして来ました。2017年6月15日に単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を全国発売。首都圏を中心に飛ぶような売り上げを記録し増刷決定。
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