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西成の歩き方 (14) アングラ萩之茶屋編

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「あいりん地区」「釜ヶ崎」という名はあっても、具体的にどこからどこまでを指すのか、いまいち分からない方も多いだろう。西成区萩之茶屋、太子、山王を中心とした、簡易宿泊所(ドヤ)が立ち並ぶ一帯と考えてもらえばいいが、大雑把に言うと浪速区側の新世界や恵美須東のあたりまで労働者街が連続している。

南海萩ノ茶屋駅

だが、釜ヶ崎を語るのに外せないのは「萩之茶屋」エリアの存在であろう。南海萩ノ茶屋駅を降りて東側、そこには時代の流れが止まったままのパラレルワールドが広がっている。

西成の歩き方レポートの続編です。初めからお読みの方はこちらからどうぞ



萩ノ茶屋駅新装模様替成る

萩ノ茶屋駅新装模様替成ると書かれた看板が駅前に掲げられている。平成4(1992)年というのは、地下鉄堺筋線の動物園前駅より天下茶屋駅までの延伸工事が大詰めを迎えていた頃である。平成5(1993)年に天下茶屋延伸開業が始まったのだ。

堺筋から西に折れ、廃止された南海天王寺支線の下をくぐる地下鉄路線は、この萩之茶屋ドヤ街の暗黒地帯の真下を通り抜けているのだ。それはそれは、多くのプロ市民やカタギじゃない市民の皆様との度重なるトラブルを乗り越えたことであろう。

最も危険な三角公園の前を通る鉄道が廃止され、地下鉄と化した今では、直接電車の窓越しに安全快適サファリパーク気分で釜ヶ崎のど真ん中を観察できなくなってしまい、悲しい限りである。

萩ノ茶屋駅前

テレビ等で「あいりん地区」が社会問題的視点で報じられる機会はあれども、その殆どが三角公園周辺や西成警察などがある表面的なエリアだけに留まっている。本当にヤバイ「裏路地」には決してカメラは入らない。

プロが入らないなら私のような素人などはとても立ち入る事のできない世界だが、それでもメディアというのは意図的に本質的な「闇」に迫る事を拒む。それは行き着く所、営利事業であるメディアの宿命であり、なんらかの「闇」と接点を持つ企業なり団体なりに関わってスポンサーになっていたりするからであろう。

だから、そういう利害関係の接点がない「みなさまの公共放送」のNHKが稀に能力を発揮したルポを放送することもあって、驚かされる。NHKの取材班が特集を組んだ「ワーキング・プア」はまさに現代日本の「地獄の釜の蓋」の中身を曝け出した内容の番組だった。

ドヤ街

昔から、釜ヶ崎の日雇いのオッサンと言えば社会の最底辺であり軽蔑の的でしかなく、社会的信用もないし誰にも相手にされないような存在だったが、肉体労働を主とした限定的な業種の労働者層が集まる釜ヶ崎というコップの中における現象でしかなかった。

今では日本中で「労働者派遣業」が大手を振るい、あらゆる業種における労働力を「コスト削減」の名の下に送り出している。非正規雇用人口1500万人と言われる時代、「アウトソーシング」という綺麗なオブラート言葉に本質的な議論を遮られているが、使い捨てでしかない人材で、会社の都合でいつでも首を切られ、退職金もボーナスも出ない「派遣さん」のどこが、釜ヶ崎の日雇いのオッサンと違うのだろう。その深刻さを考え出すと、この国の将来に絶望する。

前置きが長くなったが、こうした社会問題と釜ヶ崎は根っこで繋がっている。釜ヶ崎は「ワーキング・プア」の社会病理の縮図であり、もっと言えば未来の日本の姿。それを前提として「西成」という病魔の正体を見極めて欲しい。

リデュース・リユース・リサイクル

貧困が行き着く所まで行くとどうなるのか。「リデュース・リユース・リサイクル」がより活性化されるという一例がある。萩ノ茶屋駅の横には無造作に粗大ゴミや電化製品ゴミが山積みになった一画があり、そのゴミの山を好き勝手に労働者のオッサンが漁って、目ぼしい物がないか探している。捨てる側の人間にとってそれがゴミでも、その日を生きるオッサンの身になれば資源であり金になるのだ。

まさにこれが、究極のエコライフ。黒いゴミ袋に何を放り込んでも自由で分別すらしない大阪市民と大阪市環境局職員は資源を大切に考える西成のオッサンの爪の垢を煎じて飲め。

不動産屋とか

すこぶるマッドタウンな萩之茶屋界隈だが、そこにある店や建物などは本当にそのまま映画の舞台にも使えそうな程、いい味わいを醸し出している。時代に見捨てられた街だからこそ、残された風景と言えよう。

自転車屋とか

1階に自転車屋が入るレトロな建物、その名も「銀座センター」。イマドキの卑屈な大阪人にはとても「銀座」という憎きライバル東京(笑)の地名を冠したネーミングなどあり得ないのだが、味のある戦前建築が所々に残るのは見捨てがたい都市としての価値を感じる。往時はショッピングセンターとして機能していたのだろう。

珍古萬古

さらに骨董品屋まで西成はどうかしている。「珍古萬古」とは、珍しくて沢山の古いものを扱ってますよーという意味だと思う。おそらくそう思うが。しかしマッドタウン西成では単なるウケ狙いで書いたとしか思えない文言だ。
南海電車の窓からこの店がまる見えである。関空経由でラピートに乗って大阪に遊びに来た観光客に見られると、とても恥ずかしいですね。

謎のレクサス

おおよそスラム街には似合わない、黒塗りの謎のレクサス。 どう見ても893がらみとしか思えないピッカピカの高級車だが、フロントガラスの運転席部分には「契約
10000円」と書かれたパネルが置かれている。どうやら日雇いの求人のようだが、だとすると、この車は手配師の所有する車なのだろうか。

現代日本社会は非正規雇用の拡大で労働者派遣業が凄まじい急成長産業としてのしあがっている。「アウトソーシング」などと小奇麗な横文字を使っていても所詮は、こんな釜ヶ崎の手配師と同じ存在である。

「派遣さん」「ワーキング・プア」なんて言葉が登場するずっと昔から、この街には弱肉強食の社会がある。生きるか死ぬかのギリギリの労働者が身銭を蓄えるその分け前をハネた金で富を得る手配師が高級車を転がし我が物顔で走り抜ける。弱者を生かさず殺さずで骨までしゃぶり尽くす構造が釜ヶ崎を釜ヶ崎たらしめているものの正体だ。地方の雇用状況の酷さを直視せよ。現在進行形で日本中がプチ釜ヶ崎化している現状を感じはしないか?

どう見ても不法占拠の屋台

さらに萩之茶屋小学校の裏手に回ると、路地の両側には大量の不法占拠露天が軒を連ね、公道としての機能は完全に麻痺してしまっている。普通の居酒屋から沖縄料理の居酒屋まで、各店が工夫を凝らした店を出しているが、一体営業許可や食品衛生法に基づく表示などがなされているのか、極めて不透明である。

屋台にはエアコンまでついてる

よく見ると屋台は完全に公道上に固定されていて、エアコンまで据え付けられている。電気はどこからもらっているのかすら分からない状態だ。隣では、また新しい店舗を進出しようとしているのか、いかつい顔の夫婦が木材片手に小屋作りをしている最中だった。まさに無法地帯である。

ガード下は自由の楽園

小便の匂いが染み付く南海電車のガード下は、自由の楽園。しかしホームレスが居付く絶好の雨宿り場所なので、基本的には水を撒いたりして嫌がらせをし居付く事のないようにしている。南海電車と地元住民がこんな看板を一生懸命作ってこしらえても、まるで意味がない。

サヨビラ

アメ村よりも表現の自由が許される西成の南海ガード下。南海電鉄も焼け石に水だと分かっているので、もう諦めムード全開である。これだけの量のビラが貼られまくって、朽ちるに任されている状態。

サヨビラ

よく見ると「三里塚」「戦後50年」などの左翼運動のキーワードが見かけられる。一体いつに貼られたビラなのか、それすらも分からない。

ハト御殿発見

それにしても、ハトを可愛がるのも犬を可愛がるのも結構な事だが、他人への迷惑を省みない人間の多いこと。釜ヶ崎を見渡しても野良犬飼い犬の多さには閉口する。

歪んだ博愛精神

どんなにひもじくとも、どこかの国のように食用にしていないだけ(他人の見てない所では密かに食ってるかも知れないけど)彼らにはワンちゃんへの博愛精神があるのかも知れないが、ハト御殿だったり猫屋敷だったり、歪んだ博愛精神を持った人間が、こういう土地には何故か多いような気がするのは単なる偏見であろうか?

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参考記事
大阪日日新聞:西成・あいりん地区は今
西成暴動 – Youtube
大阪の安い宿
騒動13年目を迎えた愛隣地区(釜ヶ崎)ー釋 智徳(1973)

参考になりそうな書籍

SHINGO☆西成

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DEEP案内シリーズ管理人。大阪ベイエリアの貧民窟育ち。独自のひん曲がった視点で街歩きを続けております。2008年より上京。関西に留まらず全国、海外に取材対象を薄く広く伸ばして来ました。
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