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西成の歩き方 (13) ガード下の腐臭編

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人間というものは不思議なもので、忌避したくなるような臭いものに特別な興味を示す事例が多々ある。臍のゴマの匂いや足の裏の匂いフェチというのもいるが、この西成という街の放つ特殊な腐臭に特別な興味を示す私のような人間も、似たようなものなのかも知れない。

こういうのは「街の匂いフェチ」というジャンル付けになるだろうか。同時に、大阪DEEP案内の西成レポートを好んで見に来る人々も、同じ性癖があるのだと、勝手に決めつけさせて頂く。

今日もこの街にやってきた

西成の歩き方レポートの続編です。初めからお読みの方はこちらからどうぞ

さて、また「匂い」に誘われてこの街にやってきてしまった。相変わらずだな。

何を拾い集めているのか

何やら道路に出て車道脇の溝から何かを拾い集めている謎のオバハン。一体何を拾っているのか分からない。しかしその理由を聞くような筋合いもないだろう。謎のままである。

寒風吹きすさぶ晩秋の昼下がりに訪れたあいりん労働公共職業安定所は、やはり仕事にあぶれたオッサン達の溜まり場と化していた。なにせここで拾える仕事は釜ヶ崎全体の労働者の実に10分の1にも満たないというのだ。地区全体の失業率などハンパではないだろう。まさに日本社会という大河の最下層に沈殿する泥のように眠りこける人々は、まる1世紀もの間、釜ヶ崎のシンボルとなっている。

あいりん公共職業安定所

それに釜ヶ崎の労働者というか、大阪のホームレスには犬を飼う者が多い。パッと見て「置物」かと思ったが、本物だったので驚いた。珍しい種の犬である。犬種に詳しくないので結局わからずじまいである。

こっそり写真を撮ると、突然隣にいる、図体のでかい黒毛の犬に威嚇されて、思わずビクついてしまった。
この西成の町は生きるか死ぬか、食うか食われるかの世界だ。猛犬に噛み殺される前に職業安定所の建物を後にした。

どこのヨハネスブルグですか?

職業安定所と南海電車の高架の間とその向こう側にある道沿いは通称「泥棒市」と呼ばれる、どこで仕入れたか分からないような品物が所狭しと置かれていて、みんな好き勝手に商売している。盗品だろうが細かい法律や営業許可だとかお構いなしだ。こんな無法地帯、他のどこにも存在しない。

よく見ると、野良犬だか飼い犬だかわからない犬の群れがうろついている。子犬まで居たりもして、どうやら勝手に繁殖までしてしまっている模様だ。

ゴミ溜め

ゴミ置き場も壮絶な有様。しかし西成で生きる人間にとってはこれも資源である。

この上は市営住宅なのです

先のゴミ置き場は、あいりん公共職業安定所の上階にある「市営萩之茶屋住宅」のものだ。こんな場所に市営住宅があるということに驚くが、このような身なりの街でも一応は「住宅街」という位置付けになっている。建物南側には「萩之茶屋小学校」までしっかりと存在する。どんな教育環境やねんな。

西成では高級住宅?

中に入るとちゃんとエレベーターまで付いた住宅だ。西成ではこれが「高級住宅」なのかも知れない。場所柄、セキュリティ意識は並外れてあるのかして、各戸の郵便受けには殆ど南京錠が取り付けられている。
隣接する萩之茶屋第二住宅は完全に鉄柵でガードされていて、よその住民を端から受け入れる事を拒んでいる。

ちなみに、これらの住宅は入居条件が特殊であり、一説によると地元有力者が事実上の管理権限を持っていて、入居するための権利が高値で取引されているという情報もあるが(詳細)、大手報道機関によるソースではなく赤旗というレッドホットチリソースなので真相は定かではない。

スローガン

釜ヶ崎にはつき物の、旧世代的な左翼ゲバ文字スローガン看板。もうすぐ寒い冬がやってきて、労働者達は否が応でも越冬闘争に借り出されるだろう。餓死凍死病死、釜ヶ崎の地では毎冬数百人の命が散る。

とりわけ北風が吹きすさんだ11月の秋空のもと、ダンボールの上にガスコンロと食材を無造作に置いて、うどんでも茹でるのだろうか、謎のオッサンの周りを多くの労働者が取り囲んでいる。鶴見の中国人朝市で見かける違法屋台すら真っ青の光景だ。小便臭い路地の谷間で鼻水混じりのうどんをすする日常があるのだろう。皆、生きる為に必死。

ガード下の落書き

すぐそばにある南海電車のガード下から、とてつもない瘴気が漂っている。この落書きの数々は常人の理解を超えるセンスをしている。謎の暗号は何を意味しているのか。

ガード下の落書き

最近、アメリカ村などを中心に落書きやりたい放題で悪名を轟かせている「SANTA」の存在も、この最強デンジャラスゾーン西成では屁の突っ張りにもならない。

ガード下の落書き

「半殺し」物騒な文言の数々がたまりません。頭がラリってなければここまで書けません。

ガード下の落書き

よく考えたら、このガード下は萩之茶屋小学校の生徒が登下校するための通学路なのだ。なんという環境なのか…

しょんべんガードから見る西成の街

ガード下にこもった、小便とも大便ともつかぬ有機的に強烈な匂い。もし死体が転がっていても気づかないくらいだろう。これが西成釜ヶ崎の日常なのである。人間、どんな環境でもたいがい順応してしまう生き物だが、メディアでも滅多に扱われないタブーの向こう側の日常がこれほどまでのものとは。絶句。

このガード下の落書きと腐臭に、西成という街の深淵を見た一日だった。

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参考記事
大阪日日新聞:西成・あいりん地区は今
西成暴動 – Youtube
大阪の安い宿

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SHINGO☆西成

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DEEP案内シリーズ管理人。大阪ベイエリアの貧民窟育ち。独自のひん曲がった視点で街歩きを続けております。2008年より上京。関西に留まらず全国、海外に取材対象を薄く広く伸ばして来ました。2017年6月15日に単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を全国発売。首都圏を中心に飛ぶような売り上げを記録し増刷決定。
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