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京都市北区衣笠開キ町にある砂防ダムの中に作られた謎の不法占拠集落に迫る (全5ページ)

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今度は紙屋川の東側から集落に入り込む事にする。ここも同様に人のすれ違いが難しい細道だが、砂防ダムの中に家を建てて生活を続ける住民はこうした道だけが外界との接点となっているのだ。

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ようやく下り坂を抜けて突き当たりを左に折れると集落の入口となる。正面には民家が一軒。トタン葺きの平屋建てである。河岸段丘の斜面にコンクリートを流し込んだ上に作られた簡易な作りの民家が多い。もし紙屋川が土砂崩れでも起こしたらこの辺は一発でアウトだ。

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民家の先から左に折れると複雑な路地にバラック家屋が点々と連なっている。やはり住民が高齢化しているせいか洗濯物の衣類も老人向けのものが多い。洗濯機や水回りの一式はどの世帯を見てもやはり家の外に置かれている。

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これだけ家と家が密集している路地に居るが、どの家の前に立っても生活音が聞こえてこない。時が過ぎればやがて廃屋となる運命だろうか。有名な宇治市のウトロ地区もおおよそこんな感じだ。「置き去りにされた町」の表現がしっくりとくる。

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恐る恐る足を踏み入れた我々だが、実際入ってみると普通の集落でしかない。気が大きくなってそのままずんずんと奥へ進んでいく。舗装の中途半端なアスファルトに足を躓きそうになる。

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紙屋川東側の集落はおよそ20軒ほどの民家が密集している。どの建物も適当にトタンが壁にあてがわれているかモルタル壁の粗末な作りの家でかなり古い。

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よく見ると2階部分の窓枠が外れたままの家。恐らく廃屋と化している感じだ。向かいあう家と家の感覚は狭く、どの角度からも全景を見る事が難しい。

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全く住民の姿を見かける事もないが、この様子を見るにまだ結構な数の世帯が現役で住んでいるようだ。屋根から壁からオールトタン葺きの素敵なマイホームです。

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写真をセピア色にしたら昭和30年代の京都ですと嘘をついてもバレることはなさそうな光景。よくぞ現代までこの集落が残っていたものだ。

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しまいには民家同士の屋根が接触しそうな程狭い箇所もある。本当に通り抜けられるのか?と思う訳だがこの先に川で分断された集落を行き来する橋が架けられているのだ。

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簡素な鉄製の橋は足を踏み込む度にコンコンと音を立てる。川向かいの西側の家屋は建て替えられて立派な三階建てになっている。玄関は砂防ダムの外側(ここから見ると2階)にちゃんとしたものを置いているようだ。

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改めて橋の上から砂防ダム内集落を眺める。最初に入った西側の駐車場裏の道は家庭菜園の向こうに建つ家屋の裏手にあたる。

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紙屋川に向きあうように並ぶ民家の数々。川で東西に分断されてはいても、そこは外界から隔離され時代の流れとも切り離された一つの村である。住民の表札はその多くが在日コリアンの姓だった。

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唐突に映画「トンマッコルへようこそ」を思い出してしまった。

朝鮮戦争の中対立する南北朝鮮、その中にあって外界から隔離された一つの村では民族の壁を越えて村人達は仲良く暮らしていましたという話。ロケーションは随分異なるが、俗世とは切り離された所で「内なる朝鮮」が形成されていたのだろうか。

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村の戦後史も殆ど世間に知られずただただ静かな時を過ごしていたこの砂防ダム内集落を見下ろすように朝鮮学校の校舎が佇んでいる。

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それにしても川の上流に築かれた足場の秀逸さ。何としてもこの場所に自分の土地を築き上げるという強い意思を感じざるを得ない。戦後のドサクサで土地の収奪が常態化した激しい時代に生きた人間の意思を垣間見て、我々の世代には理解できないくらいに深い感覚の断絶を思い知らされる。

ともかく凄い場所でした。京都市北区衣笠開キ町。


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DEEP案内シリーズ管理人。大阪ベイエリアの貧民窟育ち。独自のひん曲がった視点で街歩きを続けております。2008年より上京。関西に留まらず全国、海外に取材対象を薄く広く伸ばして来ました。2017年6月15日に単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を全国発売。首都圏を中心に飛ぶような売り上げを記録し増刷決定。
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