天王寺界隈の怪しさは何も駅前にたむろするホームレスのオッサンやアジア系売春婦の存在だけではない。
四天王寺や一心寺をはじめ天王寺には数多くの寺院がある。その中で、在日コリアンの寺もあるというので、前回に続き、天王寺区在住某主婦の案内で、天王寺駅北西にあるラブホテル街へ向かった。いや、別に変な下心はないんだからねっ。
天王寺区茶臼山町のラブホテル街の一番奥にひっそりたたずむのは二つの寺、その横には料亭がある。正面にある寺が在日コリアン寺院「統国寺」。
どう見てもラブホテルと不釣合いな寺と料亭の存在は天王寺界隈の奥深さを感じさせる。大阪で生まれ育ったのにこんな場所があったなんて全く知らなかった。
この「阪口楼」という料亭は、昔、政府要人が訪れる程の格式の高い料亭だそうです。ちなみに普茶料理とは精進料理の一種。
隣の寺にはなぜか水平社宣言の一文が。
真宗大谷派系列の寺のようだ。
真宗大谷派の名前はよく聞くんですが、人権問題にやけに熱心だったり、死刑制度に頑なに反対だし、どうやら社民党の人らの考えにとても近いようだ。プロ市民顔負けの行動派なのであなどれない。
さて、統国寺に参拝しようかと思ったけど正門が閉まっていてそのままでは中に入れない。
横のインターフォンを押し、中から正面の柵を開けてもらう。
誰かが出てくるのかと思ったら自動で開いてしまいました。やけにハイテクです。
寺の入口には「百済古念仏寺」と書かれている。百済とはそれこそ古代朝鮮の国の名前であるが、統国寺の昔の名前だったようで、300年前まで実在していたのだが、大阪夏の陣で焼き払われたそうな。
そして寺の境内に入るとすぐ右側には大きな壁が立ちはだかっている。右下の案内を見てもわかるが、これはドイツから持ち帰った「ベルリンの壁」の現物だ。
東西冷戦の象徴、国家分断の歴史の生き証人としてのベルリンの壁が、同じく国家分断という歴史を辿る朝鮮半島に共通しているからこそ、ここに壁の現物が置かれているのかも知れないが、まさか大阪でベルリンの壁が見られるとは思っていなかった。
すぐ目の前の天王寺公園もホームレス除けの「ベルリンの壁」が築かれてはや20年が経つが、こちらの壁は崩されるような予兆も何もない。西成公園に行けば公園の中をまるでイスラエルとパレスチナのように公園とホームレス居住区が柵で区切られているし、大阪はまさに第三世界の玉手箱である。
統国寺本堂「大雄殿」は大阪市の指定文化財になっている建物。知らなかったですが。
その向かいには特徴的な六角堂が建っている。
六角堂の下には「彌勒庵」と書かれており中には弥勒菩薩像が奉られている。
弥勒菩薩像の下に置かれている賽銭箱にはしっかりとハングルが書かれています。
格子の柄も朝鮮半島風味。
そもそも在日コリアンの多い大阪では、韓国のシャーマニズムと仏教がまぜこぜになった独自の信仰が行われている。その源流は生駒山麗に点在する「朝鮮寺」の存在であるが、年々信仰者の数は減っていると言われている。
桜ノ宮駅前の大川の河川敷を不法占拠している廃品回収業者の敷地にも同様の朝鮮寺が置かれている。
統国寺の敷地の裏手に出ると茶臼山と河底池が見える。1614年(慶長19年)の大阪冬の陣では徳川家康が、翌年の夏の陣では真田幸村が本陣を置いた場所として歴史の授業では有名な場所だが、大阪市内にある最大級の前方後円墳でもある。色々といわくつきの土地なのね。
広々と通天閣までもが見渡せる、眺めのいい高台である。
ちなみに下の遊歩道はホームレス立ち入り禁止の天王寺公園であり、中に入るには150円の入場券を購入しなければならない。
高台の側にはなにやら歴史の重みを感じさせるどす黒い石碑が置かれている。
この石碑は「鬼城繁太郎氏永世不忘碑」。
少し調べてみると、戦前の大阪で、京橋付近にあった硝子工場の経営者だったようだ。日本人にも朝鮮人にも分け隔てなく接した事で随分慕われてた親父らしい(→詳細)
その繁太郎氏の死を偲んで硝子工場で働いていた朝鮮人一同が建てた石碑だという。
当初は京橋の硝子工場付近にあったようだが、敷地にマンションが建設されるということで、統国寺に移されたということらしい。
ともかく「統国寺」は日本の在日コリアンの歴史が色々と見えてくる寺である。興味のある人は是非参拝を。
...と、ここまで言っておいて話を終わらせるのも何なので...
統国寺について、一部にはこんな情報もある。
茶臼山雲水寺と朝鮮寺統国寺の謎(っていうか苦言) - 仏教と仏教美術の日々
朝鮮寺、統国寺の来歴について - 仏教と仏教美術の日々
日本の朝鮮・大阪民国の戦後史を省みるとあながちあり得ない話ではないと思うのだが個人的に気になる人は調べてみてはどうだろう。
参考記事
〈大阪〉ベルリンの壁が大阪で見られる - OhmyNews:オーマイニュース
聖俗混沌とした霊地に佇む朝鮮寺の現在












